Lady Green's Diary

英語講師Lady Greenの日記

SEIMEI×晴明

平昌オリンピックでのフィギュアスケート。多くの選手がとても日本的なプログラムを披露されていたなぁと思います。宮原知子選手のショート・プログラムSAYURIアイスダンスペアのSAKURA、そして羽生結弦選手のSEIMEI。やっぱりオリンピックを意識してのことなんでしょうか。どのプログラムも素敵で私は好きなんですが、中でも羽生選手のプログラムは、「よくぞこの曲を選んでくれた!」と個人的に嬉しかったりします。2シーズン前に滑ったプログラムをオリンピック・シーズンに再度持ってきたわけなのですが、彼自身気に入ってるプログラムだったのでしょう。

 

皆さんご存知の通り、この曲は映画「陰陽師」からとったもの。もう随分前の映画ですが、私は公開当時、映画館に見に行きましたよ。主演は狂言師野村萬斎さん。当時は彼のことを全く知らなくて、「誰だろ、この人?」と思いながら見ていました。そして映画が終わる頃にはすっかりファンになっていたのでした。2回も映画館に見に行きましたもん(笑)

 

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何が良かったかって、とにかく所作が美しい! 座っても立っても歩いても、とにかく綺麗。独特の存在感があって、安倍晴明という謎めいた役柄にぴったりでした。そして、声がまた良いんですね~。映画見てすっかりファンになり、家に帰って母に話したら、うちの母は萬斎さんのことを知っていて、「エイスケさんや」とのこと。NHKの朝ドラ『あぐり』に出演されていて、「この人なんか他の俳優さんと違うわ~」と注目してたのだとか。私よりも先に目を付けていた!やるな、母(笑)

 

で、この『陰陽師』の最後のエンドロールで、野村萬斎さんが舞をまっているのですが、羽生選手のフリープログラム「SEIKMEI」はこれが元になっているのだとか。2シーズン前にこのプログラムを始めて滑った際に、羽生選手が萬斎さんと対談するという企画が番組であり、私はそれを見ていたんですが、これがとても興味深い内容でした。まずはとにかく羽生君がめちゃくちゃ緊張していたのが可愛らしかった(笑)何だか怖いものなしの印象が彼にはあるのですが、こんなに緊張するのねとちょっと親近感を感じてしまいました。萬斎さんの言葉ひとつひとつを噛みしめるように聞いていたのが印象的。狂言フィギュアスケートって全く別のもののように思いますが、どちらも「型があるもの」という共通点に、2人のお話を聞いていて気付かされました。次に何が来るか見ている人は知っている。フィギュアだったら、「次は4回転」とか「ここでスピン」とか、観客にばれているわけ。狂言も型に沿って進んで行くので、見ているお客さんは次に何が起こるか知っているわけです。それでいて、しっかりお客さんの期待に応え、場合によっては期待以上のものでアッと驚かせなきゃいけない。それはなかなかのプレッシャーですよね。萬斎氏は「型のあるものの宿命」と仰っていましたが。

 

羽生選手はこの対談からかなりの刺激を得たようで、この後プログラムの振り付けが若干変わっていたようでした。オリンピックの時には更に進化してましたね。色んな人から得たものを自分の中で消化して彼らしいプログラムになっていったのではないかと思います。

 

私は『陰陽師』を見て萬斎さんのファンになり、それから狂言を見に行くようになり、能楽堂に足を運び、お能の魅力にも気付かされました。そして私の座右の書『風姿花伝』に出会う。この話はし出すと長くなるので、やめとこう(笑)

 

怪我を乗り越えオリンピックで見事に花を咲かせた羽生選手ですが、けがの具合はどうなのか多くの日本人は当日までハラハラし、そしておそらくライバルたちはドギマギしていたのではないでしょうか。ほとんど姿を現さず、情報もあまり伝わってこない中、私は「これは世阿弥が言うところの『秘すれば花』じゃないかなぁ」などと思っていました。きっとビックリさせてくれるんじゃないかなぁと。そして、思った通り、世界中を魅了して金メダルを手に入れたわけです。凄いなぁ。でも、羽生君、実は世阿弥の『風姿花伝』を読んでたりしないかな、なんて思っちゃったりして(笑)

 

 

NHK「100分de名著」ブックス 世阿弥 風姿花伝

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映画『陰陽師』をまだ見たことがない人は、これを機に是非見てもらいたいなぁと思います。そして能楽堂にも足を運んでみてもらいたい。世阿弥の言葉にも触れてみてもらいたい。羽生選手の『SEIMEI』を機に、私たち日本人が日本の魅力を再発見し、その魅力を世界に伝えていけたらなぁなんて思います。