Lady Green's Diary

英語講師Lady Greenの日記

Human Acts by Han Kang

今週末のブッククラブに向けて本を読んでいます。今回の課題本は韓国人作家 Han Kang

の Human Acts という本。日本語版では『少年が来る』というタイトルがついています。原書は韓国語で書かれているので、元のタイトルは何なのかな?と気になります。

Human Acts: A Novel

Human Acts: A Novel

 

 

少年が来る (新しい韓国の文学)

少年が来る (新しい韓国の文学)

 

今すでに8割くらい読み終えているのですが、内容が衝撃的で正直読み進めるのが辛い。それでも読まずにいられない、そんな作品です。

 

テーマとなっているのは光州事件。無知な私はこの事件のこと何も知らずに読み始めました。本書の前書きに簡潔な説明が書かれているのですが、それでもあまりピンと来ず(というかちゃんと読んでない)、香港でのデモのことを思いつつ読み始めたのですが、冒頭から続々と運ばれてくる犠牲者の遺体の描写で始まり、これは一体どんな状況なのか…と背筋が凍る。

 

1章目は行方不明の友人を探して遺体安置所を訪れる少年の話し。そして次の章ではその友人の魂が語り手となっている。この友人の語りがなんとも胸に刺さる。彼の語る過去の思い出、平凡で幸せな日常、それがとてもノスタルジックに美しく感じられる。しかし、それが政府軍との銃撃戦という非日常へと移り変わり、そこで命を落とした彼は今は死人となって他の多数の死体とともに運ばれていく。その光景を彼の魂が語っているのだけれどこれが非常に生々しい。彼の魂はまだ自分の体から離れていないので、小説でよくある幽体離脱の状態で語っているのではなく、死体が語っている状態。これが何とも生々しいのです。

 

この後の章でも何度となく、政府軍が命を落とした人達の遺体をいかに雑に扱ったかが描写されていて、「命の軽さ」がこれでもかという程に描かれて、読んでいて辛くなります。こんなに軽く人の命(それも若者たちの)を奪っていいのか。そして、まるで物の様にその遺体を扱っていいのか。しかも、これは現実に起こった出来事がベースになっているのです。

 

その後も、「危険分子」として捕らえられた学生たちの拷問の様子が描かれていく。生き残った人たちが「現実にあったとは信じがたい」出来事を、思い出したくない、封印していたい記憶を呼び起こし語っていく。何年経ってもその苦痛から逃れられない、悪夢の記憶。

 

私はこれを英語で読んでいるので所々で知らない単語が出てきて、それ故に救われているようにも思います。全てわかってしまったらもっと読むのが辛いかも。決して読みやすい英語ではない。以前に読んだ Pachinco の方がずっと読みやすかった。なので正直どれだけちゃんと読めているのか自信がありませんが、それでも非常に強力に訴えかける力があり、読んでいて辛いにも関わらず読まずにはいられません。

 

残りあと少しなので、クラブの日までに読み終えられると思います。読み終えた後に一体何を感じるのだろうか。どんな余韻を残すのだろうか。とにかく最後まで読み終えたいと思います。