Lady Green's Diary

英語講師Lady Greenの日記

Brassed Off!

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遅ればせながらのレビューになりますが、先月に見たイギリス映画の感想です。音楽をテーマにした映画ということで興味を持って見てみました。こちらも前回レビューしたアメリカ映画『タイタンズを忘れない』と同様で、事実を元にした映画です。今回の舞台はイギリス、サウスヨークシャー州のとある炭鉱の町。炭坑閉鎖の危機の中、街に昔から存在する伝統的ブラスバンドが、全英ブラスバンド選手権にむけて練習を重ねている。しかし経済的な理由からバンドを辞めるというメンバーも。そんな中、以前この街に住んでいたという女性が初の女性メンバーとしてバンドに加わることに・・・。

 

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映画の宣伝文句では「音楽と共に生きる喜びと友情」と書かれていますが、やはりアメリカ映画と違ってイギリス映画。表現の仕方がそこまでストレートではないという感じもします。もうちょっとひねくれてるような感じ。映画を見ていて受けた印象は、音楽にまっすぐ情熱を傾けるというよりも、思うようにいかない現実の中で音楽に救いを求める。そしてまた困難な状況の中で音楽を続けることへの難しさ、迷い。楽器を買い替えるにもお金がかかる。生活費もままならないのに、バンド運営費にお金を払い、練習に出かけていく夫に妻たちは冷たい目を向ける。何ともやるせないんですが、妻の気持ちもよくわかるなぁと思うのですよね。映画を見ていて何とも歯がゆく感じることが多々ありました。

 

ハリウッド的なドラマチックさはないけど、じんわりと静かに感動させてくれるようなそんな映画だと思います。全体的に暗い雰囲気もあるので、派手さはないけれど、最後の演奏シーンは圧巻で感動的。そして最後の指揮官のスピーチはとても考えさせられるものでもありました。この映画で伝えたかったメッセージがここに込められているように思います。音楽の素晴らしさと共に現実の難しさもまた考えさせられます。でもそれがこの映画の良さなのかもしれません。わかりやすい解決策を提示しない、ハッピーエンドで終わらせないのがイギリスっぽい気も。

 

歴史的なことに詳しくないので、本当はもう少しそういった背景知識を持った上で見ればもっと面白い映画だろうと思います。もう少しイギリスの歴史も知りたいなという風に思わせられました。そしてまた、音楽の力というのも感じさせられました。辛い時に人に元気や希望を与えてくれる。それが音楽の力。バンドは無事に全英選手権決勝に勝ち進むことになりますが、炭鉱は閉鎖されることになる。現実世界の厳しさ、政治への憤り、そしてもちろん音楽への愛情、そういった色んな感情を音楽に込めることで、最後の演奏が生まれたのだと思います。力強く演奏された『ウィリアムテル序曲』。迫力ある演奏が心に響き、なんだか元気づけられます。そして、帰路、メンバー達が演奏するのがLand of Glory『威風堂々』。どんな時にも強い心を持って堂々と生きていこう、そんな思いが演奏に込められている。

 

イギリス映画が好きな人にはきっとたまらない映画なのかもしれません。じんわりと心にしみるようなそんな映画が好きな人には良い。アマゾンでの評判もなかなかです。逆にアメリカ映画が好きな人には、地味な印象を受けそうです。好みが分かれそう。

 

出演された俳優さん達、ほとんどどなたも知らない方達ばかりでしたが、ユアン・マクレガーだけは知っていました。なかなか良い味を出していました。ヒロイン役の女性もとてもキュート。他の役者さん達も皆良い。中でも印象的だったのはスティーブン・トンプキンソンさん。演じるフィルは、バンドメンバーの中でも最も辛い立場に立たされている役柄。見ていて本当に辛くなる。でも、最後に妻にかける言葉が素敵。

 

映画のモデルとなった実在のバンド、グライムソープ・コリアリー・バンドは、炭坑閉鎖後も活動を続けているよう。http://www.grimethorpeband.co.uk/ 映画のサウンドトラックも担当しています。

 


Grimethorpe Colliery Band - William Tell Overture - "high quality"

 

映画でも演奏された『ウィリアムテル序曲』William Tell Overture普段クラシックはあまり聞かないですが、こうやって聞くと格好いいなと思います。

 

ちなみに映画のタイトルBrassed offというのは、イギリス英語で「怒っている」「うんざり」という意味なのだとか。ちょっとした言葉遊びですね。