Lady Green's Diary

英語講師Lady Greenの日記

Tell them about the dream, Martin!

最近ずっと、スカイプレッスンでキング牧師I Have a Dream の演説を使って音読をしているのですが、ちょうど先日読み終えたHidden Figuresの中でキング牧師の話が登場しました。超有名な演説ですが、実は詳しいことは何も知らないもので、「そうなんだ」と興味深く読むことができました。こんな感じに当時のことが書かれています。

On August 28, 1963, an estimated three hundred thousand people marched through the nation's capital, gathering on the National Mall to hear a series of speeches. The defining moment of the event came when thirty-four-year-old Dr. Martin Luther King Jr. addressed the crowd. Shortly after he began speaking, Mahalia Jackson, one of the singers who had been invited to perform at the event, urged Dr. King to share his deepest feelings with the crowd. "Tell them about the dream, Martin!" she said to him, urging him to speak to the crowd from his heart.

 あの有名な I have a dream...のくだりは、こうして即興で誕生したのですね。マヘリア・ジャクソンが the dream と定冠詞 the を使っている。「マーティン、あの夢の話をしてよ。」彼女にこれまでに話をしていたのでしょうね。そこで、用意された演説ではなく、自分の言葉で語ったのが、あの有名な言葉なわけです。

(I Have a Dream - Wikipedia)

 

音読していて、結構難しい単語も多くて、なかなか簡単にはいきません。Wikipediaの記事によると聖書やシェイクスピアの引用もあったりするとのこと。格調高すぎて普段使いは出来ませんが、こういうのを聞いて、「あ、これは聖書の引用ね」なんてわかるような教養があればいいんですが・・・。

 

Hidden Figures は、そんな風に当時のアメリカ社会の様子が垣間見れるのが興味深い点です。実は、Book Clubではあまりディスカッションが盛り上がらなかったんですが、英語学習者にとっては違う意味で面白いんじゃないかなと私は思います。ディスカッションが盛り上がらなかったのは、これが小説とは違って伝記で、しかも淡々と事実が書かれていく感じで進むので、感情移入が出来ないのですよね。メンバーの一人が、「まるでウィキペディアを読んでいるみたい」と言っていましたが(笑)確かにそんな感じです。別のメンバーは、「私はウィキペディア読むの好きだから、面白かったわ」と言っていました(笑)私はと言うと、ちょうどキング牧師の音読の内容と時代が被っていたのもあって、主人公達が働く施設で黒人と白人が完全に隔離されていたり、ランチの時間になってカフェテリアに行くと"the colored" のサインがテーブルに掲げられていて、それを目にする度に気が沈むという話があったりして、ふたつの内容がシンクロして、当時のアメリカを感じることが出来たので、楽しみながら読むことが出来ました。人類初の月面着陸の話や、お馴染み、"That's one small step for a man, one giant leap for mankind"という台詞など、「知ってる、知ってる」という話も沢山出てきて面白かったです。

 

そんな感じで、entertainingな作品ではないですが、アメリカという国に興味がある人、歴史に興味がある人、アメリカに根強く残る人種の問題について理解を深めたい人、ウィキペディア読むのが好きな人(笑)はきっと楽しめると思います。

 

Hidden Figures: The Untold Story of the African American Women Who Helped Win the Space Race

Hidden Figures: The Untold Story of the African American Women Who Helped Win the Space Race

 

 

最後に、キング牧師が演説をした、the March on WashingtonでのMahalia Jacksonのパフォーマンスも紹介しておきます。

youtu.be

 

黒人アメリカ人達の歴史は人種差別との闘いの歴史でもあります。彼ら、彼女らの創り出す音楽は、そんな苦しみの中から生み出されてきたものであり、だからこそ心を揺さぶるのでしょう。キング牧師の演説の中に、creative sufferingという言葉が出て来るのですが、その意味するところもまた同じこと。ただ苦しみに耐えて終わるのではなく、そこから新たなものが生み出されるのだと。苦しみを経験し、乗り越えて、それが未来の市民権の獲得につながっていくという意味で使われていて、最初はピンと来なかったのですが、音楽や芸術も含めてあらゆるものが、苦しみを経験して生まれていくことを思うと、なるほどcreativeと言うのはそういうことかと腑に落ちる気がします。そう考えると、黒人アメリカ人だけの話でなく私達も、辛いことがあった時には、これが未来の何かにつながっていくcreative sufferingなんだと考えれば、前向きに捉えられるような気がします。

 

ちなみに音読に使っているのはこちらの教材。ナレーターが読み上げている音声と、実際のキング牧師の演説の両方が収録されています。聴き比べてみるのも面白いです。

 

テーマ別英単語 ACADEMIC [初級]

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