Lady Green's Diary

英語講師Lady Greenの日記

2019年の読書を振り返る

2019年ももうすぐ終わりということで、今年読んだ本をちょっと振り返ってみようかなと思います。大体、年の暮れになると、年始に読んだ本が何だったのか覚えてないことが多いんですよね。今年ももれなくそんな感じ。で、自分のブログ記事でチェックする。思ったほどには読書できなかったなぁと思うのですが、それでもBook Clubにはほぼ皆勤で参加出来たし、去年よりは読めたのでまぁいいか、と自分にちょっと甘くしておきます(笑)

 

ちなみに今年最後のBook Clubはこちらの作品でした。 

Grief is the Thing with Feathers (English Edition)

Grief is the Thing with Feathers (English Edition)

  • 作者:Max Porter
  • 出版社/メーカー: Faber & Faber
  • 発売日: 2015/09/15
  • メディア: Kindle
 

短い作品だったので割とすぐに読めたのですが、何とも不思議な 物語でした。私はKindle版で読みましたが、これは紙読書の方が良いんじゃないかなという気がします。ちょっと詩的な表現もあり改行など独特のスタイル。ペーパーバックを持っていたメンバーに本を見せてもらいましたが、装丁もユニークで良かったです。

 

妻を亡くした男性と、残された2人の子供達が、大切な人の死を乗り越えていくプロセスを独特のタッチで描いています。悲しみに暮れる家族のもとにカラスがやってきて、そのまま居座ってしまう。カラスは死の象徴、いや、死というよりも悲しみの象徴なのかな。登場人物の男性はTed Hughes(詩人)の研究者という設定。Hughesの代表作にCrowという作品があり、そこから物語のコンセプトが生まれているのだろうと思います。Hughesの作品を読んでいればもっとわかりやすいのかも?ちょっと難解な部分もあるのですが、難しく考えずに物語の世界観を楽しんでしまうのがいいようにも思います。残された家族の心が少しずつ癒されていくのが感じられて、身近な人、大切な人の死を経験したことのある人には共感できる部分があるんじゃないかなという気がします。

 

こちらの本が私にとって今年最後の本になりましたが、この本を含めて今年読んだ洋書は全部で6冊。ほとんどがBook Clubの本ばっかりです。ちなみに今年のBook Club、日本人作家の本も2冊ありました。私はそれは日本語で読んだので、洋書6冊+日本語の作品2冊、合計で8冊の作品を読んだことになります。ちなみにそれ以外にも実用書なども読んでいますので、読書冊数自体はもうちょっと多いかと思います。読書家と言うには少ない冊数ですが、本を読まない人が増えていると言われる中では、まぁいい方かな?そんな2冊の和書も含めた上で、今年読んだ8冊の中からベスト3をあげてみようと思います。選ぶの意外と難しいんだけど。

 

まずは、第3位。 

Human Acts: A Novel

Human Acts: A Novel

  • 作者:Han Kang
  • 出版社/メーカー: Hogarth
  • 発売日: 2017/01/17
  • メディア: ハードカバー
 

 韓国人作家Han Kangの『Human Acts』が第3位です。これはかなりインパクトが強いい作品でした。決してハッピーな話ではないのですが、だからこそ衝撃的。読んでいて辛くなる内容でもあるのですが、現実にあった事件ということで、「こんな事があり得るんだ」「再び起こしていけない」という意味でも、読む価値のある作品だと思います。色々と考えさせられる内容です。もともとは韓国語で書かれた作品なので、翻訳者によっても印象は変わってしまうかもしれませんが、英語版はなかなかのものではないかと思います。死体の描写に始まり、戦闘のシーンや拷問のシーンなど生々しい描写がある一方で、事件が起きる前の何気ない日常のシーンや景色の描写などは非常に美しくて心にジーンと染み入るものがあります。その対比が素晴らしく、作品としてとても完成度が高いと思います。内容的に読むのにちょっと勇気がいるかもしれませんが、こういった内容に耐えられる人は是非読んでみてもらいたい。私はおそらく自分では選ばなかっただろうと思いますが、Book Clubのおかげで手に取って、読んで良かったと思います。

 

第2位。 

Pachinko: The New York Times Bestseller (English Edition)

Pachinko: The New York Times Bestseller (English Edition)

 

韓国系アメリカ人作家、Min Jin Leeの『Pachinko』です。コリアン系が2冊続いてしまいましたが、たまたまです。正直、3位と2位は迷ったんですが、純粋に面白かった方を選びました。かなりの長編でしたが、それでも途中飽きることなく最後まで読み進められました。舞台が日本、それも大阪なのも身近に感じられて面白かったです。在日コリアンを主人公にした話で、日本という国を外国人の視点、在日韓国人の視点で見るのは新鮮でもあります。アメリカではかなり売れた本らしいのですが、日本ではまだ出版されていないよう。まぁ、内容が内容なので、色々と難しい点があるのかもしれません。でも、そういうことを抜きにして小説として非常に面白かったです。登場人物もみなそれぞれに個性豊かで魅力的。次どうなるんだろうとドキドキしながら読みました。先が予測できない。ラストは賛否両論あると思うのですが、それも含めて面白いと思います。Book Clubの議論も盛り上がりました。この本も、自分ではきっと選ばないなぁ。何しろ長い!駆け込みセーフで読み終えてクラブに参加したのでした。

 

そして、最後に第1位。

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

  • 作者:小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫
 

  

The Housekeeper and the Professor by Ogawa Yoko (2009) Paperback

The Housekeeper and the Professor by Ogawa Yoko (2009) Paperback

  • 作者:Ogawa
  • 発売日: 2009
  • メディア: ペーパーバック
 

 

小川洋子の『博士の愛した数式』英語版で読みました。実はこれが今年の最初の1冊。こちらはBook Clubではなく自分のチョイス。図書館で見つけて読んでみたのでした。これは本当に静かに時間が流れていく、穏やかで温かい気持ちにさせてくれる作品でした。読み終わった後に本当にじわっと心に余韻を残す物語。先に上げた2冊と違ってドキドキハラハラというストーリーではないのだけれど、それでいて次にどうなるんだろうという気持ちで、ページをめくる手が止まらない。今こうして感想を書きながらも、物語の情景が思い浮かびます。博士と主人公が並んで歩く姿、彼女の息子の頭をポンポンとなでる博士の姿、3人で過ごした穏やかな時間、博士を喜ばせようと一生懸命にプレゼントを探す主人公と息子。そんな一つ一つのエピソードがとても生き生きと蘇ります。やっぱり私はこういう優しい気持ちにさせてくれるハッピーになる作品が好きだなぁ。ちょっと悲しくもあるのだけど、温かい気持ちになれる、本当に素敵な作品だと思います。

 

読んだ本の数も少ないし、非常に偏りのある結果かもしれませんが、1年を振り返ってみて最も心に残ったのがこの3作品になりました。来年はもっと幅広く色んな作品を読めたらと思います。読むのが遅いのであまり沢山は読めないのですが、本を読むことで自分では経験できないことを疑似体験できたり、色んな世界を見ることが出来るので、自分の世界を少しでも広げるためにこれからも読書生活を楽しんでいきたいです。