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先日は私が所属しているBookclubのオンライン・ミーティングでした。今回の課題図書はこちらの本でした。
vanishというのは「消える」という意味。定冠詞のtheがついて名詞halfにかかっています。双子の姉妹の話なのですが、タイトルからもわかる通り双子のうちの一人が行方不明になっているのです。
物語の舞台はアメリカの小さな町。おそらく実在しない架空の町だと思うのですが、黒人ばかりが住む町です。黒人なのだけれど肌色は白くて、一見すると白人と見間違えるような人たちばかり。主人公の姉妹も、何も知らない人が見れば黒人の血が流れているとはわからない。そんな二人がある日こっそり町を出ていくのです。優等生の姉と自由奔放な妹。対照的な性格のふたりですが、小さな田舎町を出て外で暮らそうと言い出したのはやはり妹の方でした。最初は妹の言葉を本気にしていなかった姉なのだけれど、結局は町を出る計画を決行することに。そして、その後ふたりが辿る人生は思いがけないものになっていきます。
物語の最初は、消えていた双子のひとりが町に戻って来るところから始まります。戻ってきたのは妹の方。田舎町をあんなに嫌がっていた妹が町に戻ってきたのには理由があります。彼女は町を出た後に黒人の男性と結婚をして娘を生みます。ところが夫が次第に暴力を振るうようになり、そこから逃れるためにまだ小さな娘の手を引いて家を抜け出し故郷の町に戻ってくるのです。生まれた娘は母親とは全く違って真っ黒な肌をしています。町の人たちは、「消えていた双子のひとりが真っ黒な女の子を連れて戻ってきた」と噂で持ち切りになります。そこから物語が始まり、少しずつ二人の失踪の経緯や、町を出た後の出来事が語られていく。でも、双子の姉はどこにいるんだろう?一緒に町を出たのに、どこに行ってしまったのか?
実はある日突然、妹にも何も告げずに姿をくらましてしまったのです。いなくなった姉の居所を突き止めようと妹は色んな手を尽くすのですが、所在がわからないまま年月が過ぎていきます。そして、物語は成長した娘の物語へと次第に移り変わっていきます。そして、失踪した姉の物語、姉の娘の物語へと広がり、さらにはふたりの娘たちが出会っていく。まるでちょっとしたミステリーのような展開で、読んでいて飽きることがない、最後まで読者をひきつけていくストーリーでした。
黒人男性と結婚した妹とは対照的に、姉の方は白人男性と結婚して真っ白な肌の娘を生みます。しかも、姉は白人と偽って生きているのです。過去を全て封印して、家族との関係も断ち白人として生きることを決めた姉。ふたりの人生は対照的なものになります。そしてそれぞれの娘たちもそれぞれの苦悩を抱えて生きている。
詳細は割愛するので、ぜひ読んでみてもらえればと思うのですが、アメリカで白人として生まれるのと黒人として生まれるのとでこれ程に人生が違ったものになるのかということをまざまざと見せられ、考えさせられます。私たち日本人にはなかなか理解しづらい人種問題について、いろいろと気付かされることがたくさんありました。
Bookclubのディスカッションでもやはり人種問題についてが話題に上がりましたが、白人として生きることを選んだ姉が、経済的な豊かさを得た一方でいかに多くのものを失ったかに驚かされたという意見がありました。誰とも本音で語り合うことが出来ないのは、本当に孤独なのです。自分の家族のこと、子供時代のことを何一つ話すことが出来ない。偽りの過去と偽りの自分を生き続けることの辛さを思うと、本当の幸せとは何だろうかと考えさせられます。
双子の姉妹とその娘たち、4人の人生を描き、時代も行ったり来たりするのでちょっとわかりずらい点もあるのですが、とても面白い作品でした。Bookclubの議論も大いに盛り上がりました。ディスカッションでどんな話が出たかなど、またもう少し書ければと思うのですが、今大学の仕事がどんどん忙しくなっていて、じっくりブログを書く余裕がなかったりします。でも、本はとても良かったのでお勧めです。良かったら読んでみてくださいね~。